【13時間26分】
この時間、私はオーシャンナビのこのウエットを着て泳ぎ続けた。
多分、このウエットを着て泳いだ最長記録ではないかと思う。
2016年7月。津軽海峡単独横断泳にチャレンジする際、私は3日前迄「水着だけで泳ぐ」と決めていた。
しかし、現地に入り船長の話を聞いているうちに、今年は例年になく水温が低い事、また、クラゲが多い事が告げられた。
元々、私自身ウエットは3代目と10年近く保有していたが、着る機会は、ウエット着用義務の大会もしくはセミナーで止まっている時間の多いときのみ。
ウエット着てレースに出るとタイムが良いよ。という仲間の意見をも耳にせず、泳ぐのは水着が一番。
と言い張っていた。
なぜなら。ウエットで擦れるのが何よりストレスになるから。
レースへの集中力もなくなるし、何よりやる気が喪失してしまう。
ワセリンをもちろん塗って参加はするが、それにも限度がある。
それならば、着ないにこした事はないだろうと考えていた。
その為、今回のウエット着用に際しては本当に葛藤した。
しかしながら、何が一番の目標かを考えた時に、「津軽海峡を泳ぎきる事」という明確な目標がある事を再認識した。
そのため、寒さを理由に、もしくはクラゲに刺されたのを理由にリタイアするならば、目標達成のひとつの手段として、ウエット着用で泳ぎきる事も判断として有りなのではないかと思った。
最悪、邪魔になったら途中で脱げばいいかと。いう位の心構えで(笑)
結果は、ウエットを着て大正解であった。
青森側のスタート直後こそ水温が22度あったが、10時間近く泳いだ場所は、14度にまで下がっていた。ウエットを着ていても、手足の末端が冷えていくのを実感した。
ちょっと入るくらいなら耐えられる水温でも、10時間以上泳いで疲労している身体には、流石に応える。
本当にウエットを着ていて良かったな。と思えた瞬間であった。
また、一番心配していた、ウエット擦れ。
もし擦れたら、船上のサポートにチューブのワセリンを投げてもらって、痛い場所に塗る手はずも整えていた。
しかしながら、その行為は無駄となった。全く擦れなかったのである。
泳いでいる時は、ウエット着ているのを忘れる位の着心地。むしろ、長時間泳ぎ続けてもどこも擦れていない。つくづく、泳ぐ為に作られたウエットなんだ。と実感した。
泳ぎ終わった今も、ウエット着て泳いだ事に、これっぽちも後悔はない。
むしろ、ウエットを着ていなかったら。と思う恐怖の方が大きい。
ウエットの恩恵もなく、ウエットにそれほど思い入れのなかった私だが、今は一緒に13時間を乗り越えたウエットが宝物になった。
身体と一体化しているウエット。
これからは、声を大にしてウエットの良さをスイマーに伝えていきたいと思います。
2016年8月9日
本間 素子
本間様、ご感想をお寄せいただきありがとうございました!